まずは1万円でお釣りが来る真空管ヘッドフォンアンプを買おうと思ったが、やはり音質に限りのあるイヤフォンやヘッドフォンを使うより、スピーカーを駆動できる程度のパワーアンプ内蔵型の方がいいように思った。
あれこれ探していたが、けっこう部品剥き出しのキットでも、全部真空管となると3万とか5万とか8万とかそれなりの値段がする。結局、プリアンプが真空管でパワーアンプがデジタルアンプのエレキットTU-H80を17,000円也で通販でゲットした。
厳密にいうと、これはハイブリッドアンプであり、純粋な真空管アンプといえるのかは分からないが、いちおう聴きたい音楽が古いジャズがメインであること、スピーカーはYAMAHAの古いミニブックシェルフ型であること、デジタルアンプなので理論的には歪みはゼロに等しいことを考慮すると、まあプリアンプだけでも十分真空管の音を楽しめるだろうと思った。
さて、すぐにキットは届いた。何だか段ボールの紙質が紙ジャケット仕様のCDみたいで、ちょっと包装だけでもウォームな感じがする。いちおう部品は全部OKだ。
キットといってもほとんどの部品が基板に実装されているので、こちらでやるのはポピュラーな12AX7型の真空管を基板上の真空管ソケットに挿すこと、そしてその基板を金属製のシャーシに取り付けることだけである。
真空管をしげしげと眺めたり、触ったり、転がしたり、果ては匂いを嗅いだり舐めたり、ずいぶんチンタラと作ったが、それでも30分で組み上がった。
シンプルなデザインのケースは横置きでも縦置きでもできる。どちらで使うか分からないので、数カ月前にコンビニで買ったゴルゴ13の漫画を敷物にした。
そして、これまでリビングでiPhoneの再生用に使っていた小型ブックシェルフ型スピーカー、YAMAHA NS-10MMをつなぐ。かつてプロのスタジオの定番モニタスピーカーであったYAMAHA NS-10Mの弟分であり、単行本程度の大きさのスピーカーでは一番いいスピーカーであり、この小さな10Wx2の真空管スピーカーで使うにはちょうどいいのではないだろうか。
まずは何はなくても、Wes Montgomeryを聴く。これまで使っていた普通の数千円のデジタルアンプに比べると、中域が強いような気がする。もともと圧縮オーディオなんで、低音とか高音が弱いとは思うのだが、アナログっぽいウォームさがある。
いちおうデジタルアンプも再度つないで聴き比べるが、ピアノとかウッドベースの音は妙に心地よく感じる。
ひとつ困ったのは電源スイッチ兼ボリュームを入れると、しばらくは左チャネルから音が出ない。不良品かと思ったが、ボリュームノブを11時近くまで回すと両チャネルから音が出てきた。どうも二連可変抵抗の接触が悪いだけのようだ。返品するのも面倒なので、得意の接点復活剤をしゅーと一吹きする。多少はマシになったような気もする。
次に辻井伸行くんのラフマニノフの音を聴いてみる。これもまたクリアながらウォームに響いている。周波数特性でいえば、中域が強く高い周波数の成分は少し弱いような気もするが、全くストレスを感じない心地よい音である。
さてボーカルも聴いてみようと思い、少し悩んだが、同世代の星、小泉今日子の「My Sweet Home」をリファレンスとして聴いてみた。あまり上手ではないが、囁くようなキョンキョンの声がこれまた切ないように響いてきた。
さらに先日惜しくも急逝してしまった大瀧詠一「Long Vacation」と「Each Time」を再生してみる。複数のピアノやギター、ストリングスを重ねた重厚な大瀧サウンド(ウォールサウンド)は、真空管との相性は抜群に思えた。
まあ正直、歪みのなさや周波数特性という意味では、デジタルアンプの方がいいのかもしれないが、まあ古いオーディオ機器のような感じが、中年オヤジの自分の聴感には心地よいということなんだろう。
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