しかも最後に初めて釣り糸を垂れた愚息の母親が豆アジや小さいメゴチをゲットしたので、自称釣り名人の愚息は悔し涙をボロボロこぼし、それを見た愚息の母は「ホホホ、お母さんは何でこんなに上手いのかしら」と威張るもので、ますます大粒のナミダを流し、さらに帰りに寄った志津川町内の天丼はさすが漁師町だけあって舌が曲がるほどの濃い味で妻子はしょっぱいと悲鳴を上げ、せっかくの家族旅行なのに、逆に家族の結束がバラバラなる結末であった。
田舎では仏様が冥土に帰る日なので8月16日は海に出てはいけないそうで、その次の日に今度は仙台にあるスリーエム仙台港パークという海釣り公園に足を伸ばす。平日だしあいにくの小雨交じりの曇り空で、周囲を見渡すと4〜5組くらいがいる程度。巨大な倉庫の並ぶ貿易港の一番奥にある公園の、ほぼ中央付近に荷物を下ろす。
妻子は隣りにいた家族連れのところに様子を見に行くが、何と見に行くところで小サバが連れている。「群れが来ているから急げ」と慌ててサビキ仕掛けを上に布の網を付ける関東式と下に重り付きのプラスチックカゴを付ける関西式で1つずつセットアップして、近隣のKIRINの倉庫前にある釣具屋で買ったオキアミを入れて、愚息→その母と釣り糸を垂らす。
まずは愚息が「お、来た!」と叫ぶとサビキ仕掛けの真ん中に豆アジらしき魚が掛かっていた。が、掛かりが浅かったようで引き上げている途中でバレる。残念、とか叫んでいると、今度は愚息の母が「来た!」と叫び、今度は糸が激しく揺れ、小サバが掛かる。今度は逃さずに、そのヌルヌルした身体を掴んでバッカンに入れる。
そうこうするうちに愚息の竿にもまた小サバが掛かり、妻子は一匹ずつゲットして大喜び。
その後は、チョイ投げをしようとしていた俺も関西式サビキに切り替え、家族3人で豆アジと小サバを次々と釣り上げた。
今度は愚息の母が「あら、かわいい」と叫ぶとウスメバルの稚魚が掛かっていた。その後、愚息のサビキにもおそらく同じ個体と思われる稚魚が掛かった。相当お腹が空いていたらしい。
途中でふらりと現れて、愚息にずっとコーチしてくれていた地元の初老の男性に「唐揚げにするとおいしく食べられるよ」と教えてくださるが、さすがにそれはマナーに反するので、海に返す。まあいずれはここの釣り人に食われてしまうのではあろうが。
コーチの男性も愚息にあれこれ教えてくれつつ、時には根掛かりした俺の糸も引き出してくれたり、やがて駐車場に戻って自分の竿をもってきて釣り出した。
ということで、豆アジと小サバが合計31匹、さらにサッパも連れたので、義父母のところに持ち帰り、大きな農家なので庭にまな板と包丁を持ち出し、ビールケースを台にして30匹の魚をさばいた。
最初は俺がやっていたが、やがて義母、愚妻、愚息が並んで三世代で小魚をさばく様子は、なかなか壮観であった。
やがて小魚の切り身は片栗粉を厚めにまぶして、唐揚げとなって胃袋に収まった。たまたまいいタイミングだったのかもしれないが、大量でよい思い出になったのはよかった。
もう激混みの東京や横浜の釣り場はつらいので、少し遠くても郊外まで遠征しようとは思った。